本業を含めて作業環境をLinuxに移行してからmacOSで開発するのが億劫になってしまい、ここ半年はDeskMiniで組んだ自作機に入れたArch Linuxで個人の開発をしていた。しかしそろそろ寒いし布団の中で開発したいなーと思い、サブPCとしてラップトップを見繕うことにした。条件は以下の通り。
- 新品
- 天板とかキーボードがテカってるPCを使いたくないので
- メモリは16GB以上
- 最近の人権は64GBと聞くけどサブなのでこれくらい
- CPUはi5くらい
- i3は避けたいかな〜くらいのつもり。あんまり強いこだわりでない
- 13インチ以下のサイズでFull HD以上の解像度
- できれば12インチ台が良い
- デカいラップトップがあんまり好きじゃない。4Kとかまでは不要
- USキーボード
- 別にJISキーでも開発できるだろうけど自宅のPCは全部USキーで統一してるので
- できればRJ45ポートがある
- ネットワーク回り触る人、RJ45ポートがないPCつらくないですか? わざわざアダプタ持ち歩くの?
- 最近のPC、薄型を目指しすぎていてだいたい省略されていて困ることが多い
- できればUSB-Cで充電できる
- 変な充電器を増やしたくない
- 家中にUSB-C 30W or 60Wの充電ケーブルが生えているからこれを使いたい
- できればバッテリを換装できる
- バッテリが弱まってたら換装できると便利なので
これだけ条件をつけるとだいたい絞られてきて、手頃なのはXPSかThinkPadあたりかなーというところ。どちらかというとXPSに傾いていた。が。メモリを16GBにしてSSDを512GBにすると13.5万程度とまあまあ高い。いや高いわけではなくて普通の値段なのは分かっているんだけど、サブにしてはやっぱり高い気がする。しかし他に選択肢もなぁと思っていたところ、突然中古のThinkPadを買ってきて外装部品変えたらいいじゃんという気持ちになった。本業で使っているのもT480なのでスムーズに生活に溶けこむであろう。世の中にはThinkPadを自分で組み立てる人間がいると聞いたことがあるし、自分もそちら側の人間になってみたい。
早速調べて実行に移すことにした。以下のような手順で進めることにした。
- 組み立てるThinkPadのモデルを選ぶ
- ヤフオクでThinkPadの中古を買う
- ThinkPadの構成部品を調べつつ本体を解体して必要なパーツをリストする
- パーツを注文する
- 全てのパーツが届いたら組み立てる
ところで自作PCってなんで自作なんだろうか。解せないところはありつつも一般にはPCパーツを買ってきて組み上げる行いを自作PCと呼んでいるはずなのでこの記事でもそれに従った。
組み立てるThinkPadのモデルを選ぶ
13インチ以下が良いので、おのずとXシリーズに絞られる。Xシリーズの中でも比較的最近の機種を見て回ることにした。
- X250
- 中古価格がこなれていて安い
- メモリがDDR3なのでもはや売られておらず、16GBのものはめっちゃ高い
- 一応変換アダプタを噛ませればUSB-Cで充電できる
- X260
- X250よりちょっと高い
- DDR4になっているのでメモリの入手性が向上した
- 一応変換アダプタを噛ませればUSB-Cで充電できる
- X270
- X260よりちょっと高いけどだいたい同じくらい
- USB-Cポートを搭載していて一応ここから充電できる
- X280
- 中古でも高い
- メモリを換装できない
- X390
- 高い、新品で買ったほうがマシ
- 13インチ
- バッテリを換装できない
- RJ45ポートがない
- WLANアダプタとかがオンボードになってて突然Wi-Fi6にしたくなってもできない、LTEモジュールも搭載できない
- もともと条件として考えてなかったのでどうでもいいけど
- 正直これが発表されたときにXシリーズで良いと思っていたところが全てなくなって愕然とした
という感じでリストしたところ、どうみてもX270だよねーということで落ち着いた。一瞬X250と迷ったものの、やはり16GBのメモリの入手性が悪いのがひっかかった。USB-Cポートを備えているのも良くて、X260を組むならX270の方が明らかに良い。
ヤフオクでThinkPadの中古を買う
そうと決まれば本体を買うぞということでいろいろ見て回った。最初はBe-Stockかなーと思っていたが、どうせ外装全部換装するのだからボコボコになった中古でもかまわんということでヤフオクで安そうなX270を競り落とすことにした。i5モデルの相場はだいたい3万弱くらいで、運が良いと送料込みで2.5万くらいで買える。入札したところ他のユーザと微妙に競ることになったけど、無事2.5万くらいで入手することができた。
ThinkPadの構成部品を調べつつ本体を解体して必要なパーツをリストする
ではどの部品を買ったらよいのか。ThinkPadは保守マニュアルが充実しているのでこれを見ればどのような部品で構成されているのかが分かる。
- X270 ハードウェア保守マニュアル
- p.65 第9章 FRU の取り外しと交換 あたりに載っている
また、以前のものがどうかは分からないが、サポートサイトでThinkPadのシリアルナンバーを入力すると当該製品に使われている部品を表示してくれる。型番も表示してくれるので便利。
届いたThinkPadのシリアルナンバーをこれに入力しつつ、解体して必要なパーツをリストする。
最初は換装する必要がないと思っていたWi-Fiアンテナやカメラは天板に接着されているので新たに購入する必要があることが分かった。その他にも、指紋リーダーとトラックパッドと本体を繋ぐフレキ(ひとつのFPCで両方に繋がっている)とCMOSバッテリがキーボードベゼルに接着されていることも分かった。
最終的に、以下のパーツを購入することにした。
- キーボードベゼル: 01HW957
- 指紋センサー: SC50F54334
- トラックパッド用FPC: SM10M38706
- ベースカバーアセンブリー: 01HY501
- コイン型CMOSバッテリ: AliExpressになかったのでAmazonで適当に検索して探した
- ファン: 01HY452
- トラックパッド: SM10K87872
- キーボード: 01EP062
- LCDベゼル: 01HW947
- カメラモジュール: 00HN376
- カメラケーブル: 01AW448
- ワイヤレスLAN/WANアンテナ: 01HW955
- LCD背面カバー: 01HW944
- LCDパネル: LP125WF2-SPB2
- LCDヒンジ: 00HN990
- X270ステッカー: 適当に検索すると出てくる(LCDベゼルの右下にあるモデル名の部分)
- カメラカバー: 適当に検索すると出てくる(LCDベゼル側に貼るやつ)
…ほぼ全部になってしまった。
なお購入した本体についていたLCDはFWXGAだったが、交換部品はFull HDのものにした。FWXGAのものはeDPコネクタが中央からズレていて横に寄っており、同じく横にズレたパネルを買わないとケーブルの長さが足りなくなってしまう。純正品のFull HDパネルは中央にあるようなので、元々Full HDだった場合は上記のパネルを買ってはいけない。
パーツを注文する
リストしたパーツを順に購入していく。基本はAliExpressで購入する。後述するがAliExpress Standard Shippingで注文することを強くオススメしたい。あと、必ずNew and Originalと書いてあるものを選ぶこと。これが書いていない場合は中古だったり互換品だったりする。もっともOriginalと書いてあるものが本当に純正品なのかはかなり疑わしいところではある。
AliにないものはAmazonなどで探すと出てくる場合がある。CMOSバッテリはAliで見当たらなかったのでAmazonで注文した。
その他、上記にないものとして512GBのSSDと16GBのDDR4 S.O.DIMMメモリを購入した。ファンを交換するのでCPUグリスも必要だが、手持ちのものがあったので買わなかった。あとはもともとCPUとファンの間に塗布されていて固着しているであろうグリスを拭くために無水アルコールがあると良い。こちらも手持ちのものがわずかに残っていたので買わなかった。
全てのパーツが届いたら組み立てる
パーツが届いたら組み立てる。注文から到着までだいたい2-3週間くらいで、全て公称の14-21days以内で届いた。今回の発送はすべてyanwenに引き継がれて台湾経由で日本に入り、そこからは日本郵政に引き継がれる。YPで終わるトラッキングコードが払出されている場合はyanwenのサイトでトラッキングできて、ここに日本に入ってきてからのコード(LXで始まってTWで終わる?)も表示される。毎日のようにパーツが届く時期があって、ディアゴスティーニのようなワクワク感があった。
分解する際はBIOSからバッテリを無効化して、一番最初にバッテリのコネクタを抜いておくこと。一度解体しているのでハマりどころも分かっていてここからはサクサク進む。といっても組み上げるまで2時間くらいかかったが。
ネジなどの細かいパーツは紛失しないようにジッパーがついた小さいビニール袋に入れてどこのパーツかを油性ペンで描いておくと良い。同一のパーツを固定するネジであっても場所によってネジの種類が違うことがあるので注意して分類しておく必要がある。
組み上げたらあとは電源を投入してBIOSの時刻を合わせて、OSをインストールすれば良い。Secure Bootのキーをリセットしておかないとインストーラを立ち上げられないことがあるので注意。OSインストール後にハマったことについては以前記事にしていた。
発生したトラブル
とまあここまで順調に組み上げたように書いてきたけど、様々なトラブルにぶちあたったのでいくつか紹介したい。細かい話題だと、注文したWi-Fiアンテナの在庫が尽きていて「別のモデルのアンテナを改造して送るが良いか?」と連絡が来たりした(その後発注してくれて正しい製品が届いた)。
ディスプレイがうまく閉まらない
組み上げたは良いがディスプレイがうまく閉まらない。どうも天板が微妙に歪曲しているからなのかキーボード付近が盛り上がっているからなのか干渉してうまく閉まらない。これに関してはどうしようもないのでひとまず無視することにした。Aliで売られているパーツ、実は正規品ではありつつも検品かなんかで弾かれたやつが流れてるんじゃないかという気がする。どれも微妙に噛み合わせが悪い。
あんまりよくないのは分かっていつつも最近はディスプレイを閉じた状態で上に重たいものを載せて矯正している。少しマシになったかもしれない??
パーツが届かない
これまで運が良かったからなのかAliExpressで買ったものはだいたい届いていたのだけど、今回初めて届かないパーツがあった。正確には一部のパーツが含まれていなかった。すぐさま紛争を開始(Open Dispute)してお金を取り戻した。含まれていなかったパーツは別のショップで購入した。
AliExpress Standard Shippingを利用している場合、パーツがないなどで紛争を開始するとAliExpressが紛争の相手となってくれる。今回は届いたパーツの写真を撮って上げることで確認として含まれていない分を返金してくれた。結構ザルなので本当にこれでいいのか…と思うものの、まあいろいろやりとりするコストよりかは安くつくのであろう。自分はある程度利用履歴があるからさっと認めてくれたのかもしれない。よくわからん。
AliExpress Standard Shipping以外の発送方法を利用した場合は紛争の相手がショップになるようで、AliExpressは仲介をしてくれるだけの存在になる。この場合返事を待ったり相手がゴネたりと対応が面倒になるケースがあるという情報をインターネットでみかけたので特に理由がなければAliExpress Standard Shippingが良いと思う。
ディスプレイのバックライトが死ぬ
本当につらい出来事だったのだけど、ディスプレイのバックライトがつかなくなった。最初はケーブルの接触不良と思っていたが、iPhoneのフラッシュを常時点灯にして画面に近づけたところ表示が見えたのでバックライトが死んだと判断した。
いろいろ調べたところ、どうも分解する際にBIOSでバッテリを無効化するのを忘れてディスプレイを取り外ししたせいでロジックボード側のヒューズ飛んでバックライトがつかなくなったようだった。そう、ロジックボードなのでつまり本体の買い直しになる。直せるひとはヒューズを交換したら直せるのかもしれないが、そこまで労力をかける気持ちがなかったので本体を買い直した。2.5万の追加出費は痛い。
おわりに
かかった金額を合計したところ以下のようになった。
- 本体2台分: 54,480円
- SSD: 6,182円
- メモリ: 5,770円
- その他のパーツ: 40,445円
- 合計: 106,877円
うーん微妙な結果! やはり本体を2台分購入することになったのが痛手だった。これがなければ8万円以下で収まっていたのだが。とはいえ故障してもパーツを買ってきたら自分の手で直せることが分かったし、新品のPCを買うよりは安かったしなにより最初に考えていた自分の要望は全て満たすことができた。16GBのメモリにしたので32GBへの拡張性も残されている。
実は去年の12月くらいから動き始めて年末には組み上げていたのだけれど、年始からこれまで1ヶ月ちょっと、ほぼ毎日のように組み上げたThinkPadで何かしらの作業をしていて満足度がかなり高い。ニッチな趣味であることは自覚しつつも、時間とお金に余裕がある人・単にラップトップPCを買うことに満足できない人には是非オススメしたいと思う。